14年ニートしていたら38歳になってた

働いてないけど、生きるのはけっこう忙しい。

昼の街を歩くとき、背筋が伸びてしまう理由

家の近所を歩くとき、僕は少しだけ背筋が伸びます。自分がニートであることを悟られないように、「これは正当な外出です」という顔をして、堂々と歩くんです。

そんな自意識が、いつも少しだけ姿勢を正します。

何もない田舎の住宅街で、平日の昼間に歩いている30代はほとんどいません。みんな朝から車に乗って仕事に出かけます。もし知り合いに見られたら、「◯◯さん家の◯◯くん、平日の昼間からウロウロして何してるの?」なんて噂されるかもしれません。

考えすぎだとは思うけれど、つい警戒してしまいます。

だからこそ、僕はいつも帽子を深くかぶり、伊達メガネをかけ、姿勢を正し、“たまたま平日休みで近所を歩いている人” に擬態するのです。

自分でも笑ってしまうほど慎重です。

先日、平日の14時ごろ、最寄りの駅から家までの道を歩いていました。前には、小学校高学年と思われる女の子がひとり、すたすたと歩いていました。たまたま同じ方向だったので、僕はしばらくその子の後ろを歩くことになりました。

距離を保ちながら、ゆっくり歩きました。

角を曲がったとき、女の子がパッと振り返りました。「なんだろう?」と思っていると、また振り返る。その後も何度も振り返る。

明らかに落ち着きのない様子でした。

「後ろから友達でも来るのかな?」と思っていましたが、しばらくして察しました。——僕のことを警戒しているのだと。

そこでようやく事情を理解しました。

その日の僕の服装は、黒のTシャツに黒の長ズボン、黒の帽子、黒のスニーカー。肩には黒のトートバッグ。全身、ほぼ真っ黒。

自分で振り返っても、だいぶ怪しい格好です。

そこに、平日の昼間、田舎の住宅街を歩くおじさんです。どう考えても怪しい。しかも、小学生の後ろを(偶然)歩いている。

誤解されても仕方がありません。

女の子にしてみれば、普通に怖かったと思います。ニート歴14年、38歳。ただ歩いているだけで、子どもから警戒される“完全に不審者”になってしまいました。

もはや笑うしかありません。

僕は歩くのが好きです。歩きながら考えごとをしたり、Podcastを聴いたり、景色を眺めたりするのが好きです。

本当はただの散歩好きなんです。

でも、身近な場所ほど歩きにくくなりました。「誰かに見られるかもしれない」という自意識で、近所を歩くのが少しだけ怖くなったのです。

気にしすぎだとは思うのですが。

だから僕は、これからも帽子を深くかぶり、伊達メガネをかけ、背筋を伸ばして擬態しながら歩くでしょう。

今日も、明日も、きっと同じように。

この街で誰よりも人の目を気にしながら、平日の昼間を歩く男——。

あ、今日は少しだけ、明るい服を着て歩きました。